那須平成の森は、保全と活用の好循環を目指しています。大切にしたいことは、自然の保全と、来園者のより魅力的な体験を両立させることでした。そこで生まれたのが、National Park Solutions(NPS)社との協働プロジェクトです。
この協働プロジェクトは、国立公園のブランディングと訴求力の向上とともに、環境保全への取り組みを、より親しみやすく、より時代に即した方法で伝えるものです。従来の自然保護の啓発は、時として堅苦しく、特に若い世代には届きにくいものでした。NPSとの提携は、その固定観念を打ち破る挑戦でした。
この挑戦では、アパレルを通じて、ファッションやデザインを入口に持つことで、今までに興味関心をもっていただきづらかった、若い世代をはじめ、必ずしも、自然好きでない方にも、国立公園をはじめとした自然の素晴らしさや、自然の中で保全活動を行う気持ちよさ、カッコよさを感じていただくことを意識しています。その時、ファッションは単なる装飾ではなく、コミュニケーションツールとして機能します。例えば、Tシャツには、那須駒の放牧により特異的に残され、那須の風景となったツツジ群落や、昭和天皇が発見されたナスヒオウギアヤメなどがデザインされ、那須の生態系や希少種に関する情報が織り込まれるなど、無意識のうちに学びを促す仕掛けを施しています。実は、このデザインの種明かしは、那須平成の森のインタープリターと一緒に森を歩くことで、合点が行くように設計されており、自らの記念としても、お土産として友人や家族にプレゼントいただいても、そこで、お客様が、自ら、このデザインの秘密をお話しいただくことで、さらに、地域の物語が伝わり、興味を持っていただくとともに、地域や国立公園のブランディングに寄与する仕掛けとなっています。
またNPSとのコラボレーションは、ブランディングや、今までに出会えなかったお客様へのイメージの訴求だけでなく、アパレルやグッズの売上の一部が、直接、那須平成の森の保全活動やインタープリターの活動資金に充てられ、自然環境やフィールドの保全と活用の好循環にも貢献していただいています。
このプロジェクトで、特に注力したいのは、今までにアプローチできなかった、10代から30代の若い世代へのアプローチです。未来の自然環境の保全の担い手でありながら、従来のやり方法では、十分に興味を持っていただくことができませんでした。
おしゃれなデザインと環境メッセージを融合させることは、自然環境の保全への関心を自然に喚起できると考えています。那須の固有種や生態系をモチーフにしたグラフィックデザイン、地域の自然環境保全に関する情報提供、サステナブルな素材の使用など、多角的なアプローチを採用しています。各アイテムには、その地域の生態系や環境保全に関する詳細な解説を添付し、物語とともにお客様に届けることで、単なる商品以上の価値を持つと考えています。
もう一つの重要な取り組みは、環境保全ボランティア活動です。2024年7月6日には、NPSの関係者と共に那須平成の森の歩道の整備や外来種の駆除活動を行いました。この活動は、那須の自然を守るための新たなスタートとなりました。具体的には、近自然工法(地形や倒木などを活用し、持続可能な形で整備する方法)を用いて森の中の歩道を整備し、八幡つつじ園地では特定外来種であるオオハンゴンソウの駆除を行いました。特に、NPSの活動に共感したアーティストやモデル、インフルエンサー、雑誌編集者、アパレル店舗関係者など、自然に興味関心の強い多様な業種の方々に参加いただき、具体的な活動はもとより、活動をかっこよく、おしゃれに発信いただけたことも、地域の環境保全に大きく貢献いただけたと感じています。
NPSは、那須平成の森とのパートナーシップをきっかけに、2024年10月24日には、那須町とも「国立公園の環境保全と活性化に関する連携協定」を結びました。
今後は、那須町も含め、更にパワーアップして取り組みを継続していく予定です。
自然を「観る」だけでなく、「楽しみ」「学び」「行動する」場所にしていくことを目指し、私たちの活動を通じて、訪れる皆さんが自然の魅力や大切さを実感するとともに環境保全に対する意識を高めていただける場になっていくことを目標に取り組みを続けていきたいと思います。
また、そうした実際の「楽しみ」「学び」「行動する」現場と、デザインやアートを通じて、都市や企業を結び、より、多くの人たちに、この輪の中に入っていただき、ともに、楽しみ、学び、行動していく仕組みづくりにも取り組んでいきたいと話しています。
私たちと共に自然を守り、未来のために行動する仲間として、一緒に新たな挑戦に取り組んでいきませんか?