那須平成の森では、「樹林地管理計画」を通じて、豊かな自然環境を維持し、訪れる人々に新たな発見や森での体験等を通じた楽しさや学びの機会を提供することを目指しています。この計画は、開園10周年を迎えるにあたり策定された「那須平成の森マスタープラン」に基づいて立案されました。
「那須平成の森 樹林地管理計画」は、「那須平成の森マスタープラン」の基本理念である「訪れる度に新たな発見!学び、楽しみ、守りつなげる、那須平成の森」を軸に、「森を能動的に管理し、より多様な利用ができる森とする」ことを目指し、森林の価値を高めるための具体的な管理方法や手法を示しています。
これまで私たちは、自然環境の保全と利用の両立を目指してきましたが、環境の変化や人々の利用ニーズの多様化に伴い、より効果的で、体験を通じた多様な楽しみや学びを得られる「能動的管理」が求められるようになりました。「樹林地管理計画」は、こうした背景を踏まえ、この森の成り立ちや経緯を大切にしながら、今後も、持続可能な利活用を実現するための新たな取り組みとして位置付けています。
具体的には、「那須平成の森の歴史を踏まえ、豊かで多様な自然をしっかりと守りながら、その一部について、かつて行われてきた薪炭林施業や那須駒の放牧など、森と人が共に暮らして来た日本ならではの森づくりを進め、より多様な楽しみや体験、それらを通じた学びを提供できるような場所とする」ことを目指しています。 この計画に基づき、私たちはさまざまな活動を展開しています。
ツツジの育つ明るい森づくり(BOTANIST 財団助成プログラム)
実施日:2024年 11月 10日
実施概要:「ツツジの育つ明るい森づくり」プロジェクトは、親子で参加できる、楽しみながら自然の成り立ちや、恵みを感じていただけるイベントとして企画、開催いたしました。この活動では、かつては、馬が放牧されていたことで、ツツジが育つ明るい森として維持されていた環境が、その後、放置され、徐々に暗い森になり始めていた森の一角について、まず、手を入れる前の状況を把握するための毎木調査を実施し、その上で、今後のツツジの生育を考えて、どの樹木を剪定するかを考えての間伐作業を通じて、実際に、ツツジが育つための明るい森の環境を整備するものでした。また、間伐した材を使ったカトラリー作りも行いました。
この活動を通じて、「人の手を加えることで守られる自然環境もある」という意義や重要性を伝え、特に親子での参加のイベントとした理由は、自然の大切さを親から子へ伝え、家庭内で自然への関心を共有することを目指していたからです。親子で一緒に活動することで、自然についての理解を深め、絆を深める機会になったのではないかと感じでいます。
このプロジェクトは、「樹林地管理計画」に則り、那須平成の森のパートナー事業者である「NPO法人那須高原自然学校」が、「BOTANIST財団」の助成を受けて実施しました。多くの皆さまのご支援とご協力、ご参加を心より感謝し、自然と触れ合いながら楽しいひとときを過ごしていただけたことを嬉しく思っています。
シカの食害から樹木を守る(JR東日本研修プログラム)
実施日:2024年 9月 30日、2024年 10月 21日
実施概要:このプログラムは、JR東日本のワーケーション研修およびCSR活動の一環として、シカによる樹皮剥ぎ被害への対策の一環として行いました。具体的には、樹木に保護ネットを巻く作業を実施し、那須平成の森のインタープリターによる、活動の意義や重要性に関するレクチャーやガイドウォークも併せて行いました。
シカの食害は樹木の生存に深刻な影響を与え、多くの樹木が枯死することは、森林の生態系のバランスを損なう恐れもあります。そのため、樹木をシカの被害から保護することで、地域の生態系を守り、次世代に美しい自然を引き継ぐことを目指しています。
私たちは、こうした活動を通じて、多くの方々に、無理なく楽しみながら、保全活動に関わっていただく機会を創出し、自然環境の大切さを実感いただいたり、具体的に持続可能な社会の実現に向けた一歩を踏み出す機会に出会っていただくことを願っています。また、JR東日本とのコラボレーションをきっかけに、地域と企業が連携し、共に環境保全に取り組む事例を広めていきたいと考えています。
那須平成の森は、地域の皆さま、地域内外の事業者、企業、研究者、そして森を訪れる多くの人々との「共創」を大切にしていきたいと考えています。環境保全や持続可能な利活用には、特定の組織や専門家だけで達成できるものではなく、多様なステークホルダーの参加が不可欠だと考えています。また、一方的な「手伝っていただく」「協力いただく」という関係性だけでは、長続きしないのではないかとも考えています。そこで、「共創」という、大きなビジョンや思いは共有しながらも、それぞれが関わる意義や意味が見いだせる活動であり、相互に連携・協力しながら、Win-Winで、お互いの取り組みや存在を高め合い、新たな価値を創造していける場として、「つながる森づくり」を進めていきたいと考えています。
那須平成の森は、こうした「つながる森づくり」を通じて、そこに関わる人たちの関係性も大切に育むことで、森の未来を共に支える「人と人との絆」も広げいきたいと考えています。こうしたことから、那須平成の森では、今後、「つなぐ森づくり」「つなぐ人づくり」というビジョンを掲げて、取り組みを進めていきたいと考えています。
これからも私たちは、ビジョンの実現に向け、樹林地管理計画に基づく様々な具体的活動を地域社会や企業、そして訪れていただく多くの方々と実践しながら、持続可能な形で進めていきたいと考えています。自然環境の保全や管理、そして持続可能な形での利活用、教育などに関心を持つ様々な方々の参加を歓迎し、共に活動を進めていきたいと思っていますので、私たちの取り組みが気になった方は、ぜひ気軽にご相談いただいたり、遊びに来ていただき、保全プログラムにご参加いただければ嬉しい限りです。