那須平成の森における環境保全への取り組みは、私たちにとって大切な想いでした。その想いの中でこれまでペットの入場を制限してきたという理由には、野生動物の生態系や植生を守り、訪れる方々が安心して過ごせる環境を作るという想いがありました。しかし、それと同時に、ペットと一緒に自然を楽しみたいという多くの方々の声も寄せられていました。そこで、自然環境に配慮しながら、ペット連れの方も、そうでない方も、共に自然を楽しめる環境を作れないだろうか、という思いに至りました。
そこで私たちは、これまでの方針の見直しや、様々な方々からご意見をいただき、「人、ペット、自然がバランスを取りながら、一緒に楽しめる新しい環境」の可能性を探るための実証実験に挑戦することにしました。自由散策エリアである「ふれあいの森」の中で、比較的自然環境に支障が少ないと想定されるエリアを「ペット連れ可能エリア」として新たに設定し、このエリアでは、飼い主の方々にペットの排泄コントロール(オムツ着用でも可)とリードの使用、また、ワクチン接種の証明等もお願いしました。
野生動物や植生への影響を最小限に抑え、ペットの安全を確保しながら、ペットと飼い主が一緒に自然を楽しめる空間づくりに力を入れ、利用者の皆様には「野生動植物を守るためのお約束」をお渡しし、自然環境の保全と活用のバランスの大切さを知っていただけるよう、心がけました。
今回の実証実験を通じて、ペット連れの方々から、「ルールが厳しい」という声を多くいただくのではないかと覚悟していましたが、ふたを開けてみると、そのような声よりも、「厳しいルールが課されるとしても、それだけプレミアムな場所に入れるんだということが実感できた」「逆に言うと、それをクリアーしたペット連れの方たちだけが入っているという安心感があった」というような嬉しい声も目立ちました。また、ペット連れでない方々にもアンケートを取ったところ、「ゾーニングとルールが徹底されていれば、そこまで抵抗は無い」という前向きな受け止め方も多くいただき、大きなトラブルもなく、利用後の調査でも、自然環境への大きな影響は見られませんでした。
那須平成の森は、様々な方に、自然の多様な楽しさを味わっていただけるような、「開かれた森」を目指しています。今回の実証実験は、人と自然、そしてペットとの新しい関係を模索する、とてもワクワクする、新しいチャレンジでした。
ペットと過ごす時間を大切にしている方々にも、ペットという家族と一緒に自然を味わうことで、より深く自然とつながれる環境を作りたいと考えています。
実証実験を通じ、那須平成の森として、人の営みと自然との新しい関わり方の一つを提案できたと感じています。那須平成の森から生まれるこの新しい「共生のカタチ」が、多くの人々に新しい国立公園の活用の可能性と希望を届け、新たな世代へと引き継がれていくことを願っています。
那須平成の森は今後もフィールドの維持管理とブラッシュアップを続け、この新しい活用モデルをさらに発展させていきたいと考えています。自然と人、そしてペットが一緒に過ごせる環境づくりに、これからも全力で取り組み、多くの方に楽しんでいただける那須平成の森にしていきたいと思います。